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DevOpsとは?すべてのOpsの土台となる考え方

監修:アジアクエスト株式会社 AIアクセラレーション室
執筆:アジアクエスト編集部

DevOps(デブオプス)とは、ソフトウェアの開発(Development)チームと運用(Operations)チームが分断されずに協力し、ソフトウェアを速く・安全に・継続的に届けるための考え方と実践です。MLOpsやLLMOpsなど、現在注目されているさまざまなOpsの多くは、DevOpsを出発点として生まれました。

本記事では、DevOpsが生まれた背景、代表的な実践、成果を測るための指標、そして導入の進め方を、経営層・IT部門責任者の視点で解説します。MLOps・AIOps・LLMOpsなど他のOpsとの関係は、関連記事「XOps(〇〇Ops)とは?DevOps・MLOps・AIOps・LLMOpsの違いと全体像」で整理しています。

この記事でわかること

  • DevOpsの定義と、生まれた背景
  • CI/CDやInfrastructure as Codeなど、DevOpsを支える主な実践
  • DevOpsの成果を測る「DORAの指標」
  • DevOpsがすべてのOpsの土台になる理由と、導入の進め方

1. DevOpsとは?開発と運用の対立を解消する考え方

DevOpsが生まれた背景には、開発チームと運用チームの目的の違いがあります。開発チームは新しい機能をいち早く届けたい一方で、運用チームはシステムを安定して動かすために変更を最小限に抑えたいと考えます。目的が逆向きのため、リリースのたびに調整が難航し、リリースが年に数回しかできない、障害の責任をめぐって部門間で対立する、といった状況が生まれがちでした。

DevOpsは、この壁を取り払い、両者が「価値を速く、安定して届ける」という共通の目標に向かうための文化と仕組みです。変更を大きくまとめて年に数回リリースするのではなく、小さな変更を頻繁に、自動化された手順で安全に届けることで、スピードと安定性の両立を目指します。「DevOps」という言葉は、2009年にベルギーで開かれたカンファレンス「DevOpsDays」をきっかけに広まりました。

重要なのは、DevOpsが特定のツールや職種の名前ではなく、組織文化・プロセス・技術をセットで変える取り組みだという点です。

2. DevOpsを支える主な実践

DevOpsの考え方は、次のような具体的な実践によって支えられています。

実践 概要 得られる効果
CI(継続的インテグレーション) コードの変更を頻繁に統合し、自動でビルド・テストする 不具合の早期発見、統合作業の負担軽減
CD(継続的デリバリー/継続的デプロイ) テストを通過した変更を、いつでも本番に反映できる状態に保つ(継続的デリバリー)。本番への反映まで自動で行う形は継続的デプロイと呼ぶ リリースの高速化、手作業によるミスの削減
Infrastructure as Code(IaC) サーバーやネットワークなどのインフラ構成をコードで定義・管理する 環境の再現性向上、構築作業の自動化
モニタリング・可観測性 本番システムの状態をログやメトリクスで常時把握する 障害の早期検知、改善のためのデータ取得
小さく頻繁なリリース 変更を小さな単位に分けて、頻繁に届ける 1回あたりのリスク低減、問題発生時の原因特定が容易に
振り返り(ポストモーテム) 障害や失敗から、個人を責めずに仕組みの改善点を学ぶ 同じ問題の再発防止、学習する組織文化の醸成

これらはいずれも単独で導入するより、組み合わせることで効果を発揮します。たとえば、CI/CDで頻繁にリリースできるようになっても、モニタリングがなければ問題に気づけず、かえってリスクが高まります。

3. DevOpsの成果をどう測るか:DORAの指標

DevOpsの取り組みが成果につながっているかを測る指標として、広く参照されているのが「DORAの指標」です。DORA(DevOps Research and Assessment)は、ソフトウェアデリバリーの実態を長年調査してきた研究チームで、現在はGoogle Cloudの一部となっています。当初は4つの指標でしたが、2023年に復旧時間の指標が「デプロイ失敗からの復旧時間」に再定義され、2024年に「デプロイの手戻り率」が追加されて、現在は5つの指標で構成されています。

指標 測るもの 観点
デプロイ頻度 本番環境へのデプロイがどれだけ頻繁に行われているか スピード
変更のリードタイム コードの変更がコミットされてから本番に反映されるまでの時間 スピード
デプロイ失敗からの復旧時間 本番へのデプロイが失敗してから、サービスが復旧するまでの時間 スピード
変更失敗率 本番へのデプロイのうち、ロールバックや緊急修正など即時の対応が必要になった割合 安定性
デプロイの手戻り率(deployment rework rate) 本番の障害に対応するために、計画外に行われたデプロイの割合 安定性

出典:Google Cloud(2020年9月22日)、DORA(2026年1月2日)をもとに編集部作成

これらの指標の特徴は、スピードと安定性をセットで測る点にあります。なお、現在のDORAの整理では、復旧時間はスピード(スループット)側の指標に位置づけられています。デプロイ頻度だけを追えば障害が増え、変更失敗率だけを追えばリリースが止まります。Google Cloudは、DORAの調査において、これらの指標で最も優れた「エリート」チームは、組織としての業績目標を達成または上回る可能性が2倍高いと紹介しています(2019年の調査結果。なお、2022年の調査では「エリート」に該当する層は見られなかったと補足されています)。

経営層にとっては、DevOpsへの投資効果を技術的な言葉ではなく、「どれだけ速く、安全に価値を届けられるようになったか」で説明できる点でも有用な指標です。

4. DevOpsがすべてのOpsの土台になる理由

MLOps、LLMOps、DataOpsなど、後から生まれたOpsの多くは、DevOpsの実践を特定の対象に拡張したものです。なお、IT運用にAIを取り入れるAIOpsや、クラウドの費用管理から発展したFinOpsのように、DevOpsとは別の文脈から生まれたものもあります。

Ops DevOpsから引き継いだもの 追加された対象・論点
MLOps CI/CD、自動化、モニタリング データとモデルの管理、継続的な再学習
LLMOps CI/CD、モニタリング 回答品質の評価、プロンプトや参照データの管理、APIコスト
DataOps CI/CD、自動テスト、バージョン管理 データパイプラインとデータ品質
DevSecOps CI/CDパイプライン 開発初期からのセキュリティチェック

つまり、CI/CDや自動化、モニタリングといったDevOpsの基本が根づいていない組織では、その上に積み重なるMLOpsやLLMOpsも定着しにくくなります。AIの本番運用に進む前に、まずDevOpsの土台が整っているかを確認することが、遠回りに見えて確実な道筋です。

5. よくある失敗:ツールを導入しただけのDevOps

DevOpsの導入でよく見られる失敗は、CI/CDツールを導入したことで「DevOpsを実現した」と考えてしまうことです。ツールは入ったものの、開発と運用の責任分担は以前のまま、リリースには依然として複数部門の承認が必要、障害が起きれば担当者探しが始まる、という状態では、スピードも安定性も向上しません。

失敗を避けるためには、次の3点を意識することが重要です。

  • 責任を共有する:「作る人」と「動かす人」を分けるのではなく、サービスの品質に開発と運用が共同で責任を持つ体制にします。

  • 承認プロセスを見直す:手作業の承認を自動テストや段階的なリリースで置き換え、安全性を保ちながら待ち時間を減らします。

  • 指標で改善を続ける:DORAの指標などで現状を測り、ボトルネックを特定して改善を繰り返します。

6. DevOpsの導入ステップ

DevOpsは、全社で一斉に始めるより、対象を絞って小さく始める方が定着しやすくなります。現実的な導入ステップは次のとおりです。

ステップ1:現状を測る

まずはDORAの指標を使い、現在のデプロイ頻度やリードタイム、変更失敗率、復旧時間などを把握します。正確な数値が取れない場合でも、「リリースは月に何回か」「障害からの復旧に何時間かかるか」といった概算から始めて構いません。

ステップ2:対象のサービスとチームを1つに絞る

変更頻度が高く、改善効果が見えやすいサービスを1つ選び、開発と運用のメンバーで小さなチームをつくります。

ステップ3:CIとテストの自動化から始める

コードの変更ごとに自動でビルド・テストが走る仕組みを整えます。自動テストが信頼できる状態になることが、後続の自動デプロイの前提になります。

ステップ4:デプロイの自動化とIaCを進める

テストを通過した変更を自動で本番に反映できるようにし、インフラ構成もコードで管理します。環境の差異による不具合が減り、リリースの手間が大幅に減ります。

ステップ5:モニタリングと振り返りを定着させ、横展開する

本番の状態を常時把握し、障害が起きたら仕組みの改善につなげる振り返りを習慣化します。最初のチームで確立した型を、他のサービスへ広げていきます。複数チームへの展開が進んだ段階では、共通基盤を整える「プラットフォームエンジニアリング」も選択肢になります。

7. AWS・Azure・Databricks・SnowflakeでDevOpsを実現するには

主要なクラウドやデータ基盤は、いずれもDevOpsの実践を支える機能を備えています。重要なのは、前述の体制と進め方を定めたうえで、既存環境に合った機能を選ぶことです。

基盤 DevOpsで活用できる主な機能 向いているケース
AWS CI/CD系サービス(AWS CodePipelineなど)、IaC(AWS CloudFormationなど)、監視(Amazon CloudWatch) アプリケーションやインフラがAWS上にあり、AWSでCI/CDから監視まで完結させたい
Microsoft Azure Azure DevOps、GitHub Actions、IaC(Bicepなど)、監視(Azure Monitor) Microsoft製品を全社で利用しており、開発基盤もAzureやGitHubで統一したい
Databricks Declarative Automation Bundles(旧Databricks Asset Bundles。データ・MLの処理をコードで管理・デプロイ)、Git連携 データパイプラインや機械学習の開発にDevOpsの手法を適用したい
Snowflake Git連携、Snowflake CLIなどによるデプロイの自動化 データ基盤の構成やSQLの変更をコードで管理し、自動でリリースしたい

DatabricksやSnowflakeのようなデータ基盤でも、DevOpsの考え方は重要です。データ処理のコードや基盤の設定を手作業で変更していると、アプリケーション開発と同じように属人化や障害の原因になります。なお、各サービスの名称や機能は更新が頻繁なため、検討時には最新情報をご確認ください。

アジアクエストでは、DevOpsの体制・プロセス設計から、AWS、Microsoft Azure、データ基盤(Databricks・Snowflake)を活用したCI/CD環境の構築、運用、内製化支援までを一貫して支援しています。

8. よくある質問(Q&A)

Q1. DevOpsとは何ですか?

ソフトウェアの開発チームと運用チームが協力し、ソフトウェアを速く・安全に・継続的に届けるための考え方と実践です。CI/CD、Infrastructure as Code、モニタリングなどの実践と、開発と運用が品質の責任を共有する組織文化をセットで取り入れます。

Q2. DevOpsとアジャイル開発の違いは何ですか?

アジャイル開発は、要件の変化に柔軟に対応しながら短い期間で開発を繰り返す「開発の進め方」です。DevOpsは、その開発成果を本番環境まで速く安全に届け、運用しながら改善し続ける「開発から運用までの仕組み」です。両者は対立するものではなく、組み合わせることで効果が高まります。

Q3. CI/CDとは何ですか?

CI(継続的インテグレーション)は、コードの変更を頻繁に統合して自動でビルド・テストする実践です。CDには2つの意味があります。継続的デリバリーは、テストを通過した変更をいつでも本番に反映できる状態に保ち、本番への反映は承認などを経て行う実践です。継続的デプロイは、テストを通過した変更を自動で本番まで反映する実践です。CI/CDは、DevOpsを支える中核的な仕組みです。

Q4. DevOpsの効果はどのように測ればよいですか?

DORAの指標(デプロイ頻度、変更のリードタイム、デプロイ失敗からの復旧時間、変更失敗率、デプロイの手戻り率)が広く参照されています。当初は4つでしたが、2024年に手戻り率が加わり、現在は5つです。スピードと安定性をセットで測れるため、一方だけを追って他方を損なうことを防げます。まずは現状の数値を把握し、改善の推移を追うことから始めるのが効果的です。

Q5. DevOpsとSREの違いは何ですか?

SRE(サイト信頼性エンジニアリング)は、Googleが提唱した、ソフトウェアエンジニアリングの手法で運用の信頼性を高める考え方です。DevOpsが開発と運用の協力という「文化・考え方」を広く示すのに対し、SREは信頼性の目標設定や運用の自動化といった「具体的な実践方法」を示すものと整理されることが多く、DevOpsを実現する手段の一つといえます。

Q6. レガシーシステムでもDevOpsは導入できますか?

導入できます。ただし、自動テストがない、環境の構築が手作業に依存しているといったシステムでは、一度にすべてを自動化するのは難しいため、テストの自動化やデプロイ手順の標準化など、効果の大きい部分から段階的に進めるのが現実的です。システムのモダナイゼーション(最新化)とあわせて計画するケースも多く見られます。

Q7. DevOpsの導入には、どのくらいの期間がかかりますか?

対象範囲と現状の自動化の程度によって大きく変わります。あくまで一般的な目安ですが、以下の期間を見込むケースが多く見られます。

  • 単一サービスへのCI/CD導入:1〜3か月程度
    既存のクラウド環境があり、ソースコードがバージョン管理されていることが前提です。自動ビルド・自動テスト・自動デプロイの仕組みを構築します。

  • 複数サービスへの展開と運用体制の定着:6か月〜1年以上
    IaCや監視の標準化、チーム体制や承認プロセスの見直しまでを含みます。


【期間変動の主な要因】

  • 自動テストが整備されている場合:CI/CDの構築に集中でき、短期間での立ち上げが可能です。

  • 自動テストがなく、手作業の手順が多い場合:テストの整備や手順の標準化が先に必要となり、その分期間が延びます。

Q8. DevOpsの導入費用はどのくらいですか?

前提条件によって大きく変動しますが、一般的な目安は以下のとおりです。

  • 単一サービスへのCI/CD環境の構築(既存クラウド環境あり):数百万円程度から
  • 複数サービスへの展開と、IaC・監視の標準化を含む整備:1,000万円前後から

これに加えて、CI/CDツールや監視サービスの利用料が継続的に発生します。一方で、リリース作業や障害対応にかかる工数の削減効果も見込めるため、DORAの指標などで効果を測りながら投資判断を行うことをお勧めします。

Q9. アジアクエストのDevOps支援には、どのような特徴がありますか?

CI/CDツールの導入にとどまらず、開発と運用の責任分担や承認プロセスの見直しといった体制づくりから支援する点が特徴です。AWS・Microsoft Azure・Databricks・Snowflakeを横断し、お客様の既存環境に合った構成でCI/CD環境を構築します。構築後は、お客様自身で運用・改善できる状態を目指す内製化支援まで一貫して伴走します。

Q10. DevOpsとあわせて、MLOpsやデータ基盤の相談もできますか?

はい、ご相談いただけます。DevOpsはMLOpsやDataOpsの土台となるため、将来のAI活用やデータ基盤の整備を見据えて、全体の進め方をご提案することも可能です。お問い合わせはサービスへのお問い合わせページから承っています。

9. まとめ:DevOpsは「速さ」と「安定」を両立する組織の土台

DevOpsは、開発と運用の分断を解消し、ソフトウェアを速く安全に届け続けるための考え方です。MLOpsやLLMOpsなど、AI時代のOpsの多くはDevOpsの上に成り立っており、DevOpsの土台がAI活用の成否にも影響します。

進め方の要点は3つです。第一に、ツールより先に、開発と運用が品質の責任を共有する体制をつくること。第二に、DORAの指標で現状を測り、改善の効果を見える化すること。第三に、1つのサービスで型をつくり、そこから横展開することです。

アジアクエストでは、DevOpsの現状診断から体制設計、AWS・Azure・Databricks・Snowflakeを活用したCI/CD環境の構築、内製化までを一貫して支援しています。「リリースに時間がかかる」「障害対応に追われている」といった段階から、お気軽にご相談ください。


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