ABOUT PROJECT

東海旅客鉄道株式会社 様
橋りょう検査業務の高度化、効率化を目指し、
検査アプリのプロトタイプ版を開発
東海旅客鉄道株式会社様(以下、JR東海様)は、東海道新幹線をはじめとする鉄道事業を中心に、関連事業(流通、不動産など)を展開しています。
この度、JR東海様は「より高度で効率的な維持管理業務の実現」を目指し、橋りょうの検査業務にアプリを活用することを構想し、そのプロトタイプ版の開発をアジアクエストが支援しました。
お客様HP: https://jr-central.co.jp/
BACKGROUND AND PURPOSE OF THIS PROOF OF CONCEPT
本実証実験の背景と目的
インフラの維持管理業務を改革する検査アプリと
蓄積データの活用
日本の社会インフラ(道路橋、トンネル、河川、下水道など)は、高度経済成長期に集中的に整備されました。近年では、それらの老朽化が進む一方で、労働力不足といった環境変化も顕在化しており、戦略的かつ効率的なメンテナンス体制の構築が、社会全体において喫緊の課題となっています。
こうした背景のもと、JR東海様は「より高度で効率的な維持管理業務の実現」を重要な課題として認識されており、この課題解決として、検査アプリの活用による検査業務の高度化、効率化を通じ、業務改革を推進することと、蓄積したデータの分析により戦略的な維持管理を図ることを構想されました。
ROLE
役割
橋りょう検査業務の高度化、効率化を実現するアプリ開発
専門知識を活かした機能設計と実装プロセス
アジアクエストでは、検査アプリの要件定義から実装・テスト・試行までを一貫して対応しました。開発チームは、プロジェクトマネージャー(PM)、バックエンドエンジニア、フロントエンドエンジニア、インフラエンジニアで構成され、各分野の専門知識を活かしながら開発を進めました。
要件定義の段階で、現場の検査業務における具体的な課題を整理し、アプリに必要な機能を明確化しました。特に過去変状データの表示機能や検査支援機能、データの一元管理など、検査業務の高度化、効率化に直結する機能を重点的に検討しました。
過去変状データの表示機能は、2D図面・3Dモデルを活用し、過去変状位置の可視化に工夫を図り、橋りょう検査の現場でスムーズに捜索できる仕組みを構築しました。
検査支援機能は、検査判定時に参照するマニュアルを表示する機能や、検査における着眼点として、重点着目箇所の表示機能を組み込み、現場での検査業務を高度化できる仕組みを構築しています。
開発完了後は現場試行を開始し、実際の検査業務におけるシステムの有用性を検証しながら、さらなる改善点を洗い出すフェーズへと進んでいます。
プロトタイプ版の開発ながら将来の拡張性を意識
AWSを採用した柔軟なシステム構成
本システムでは、拡張性・柔軟性・コストバランスを重視し、AWSのマネージドサービスを中心に構成しています。フロントエンドはReactで開発し、静的ファイルはS3に配置し、CloudFrontを介して高速・安定した配信を実現しています。
バックエンドはLaravelをコンテナ化し、Fargate上で稼働させることでインフラ管理を最小限に抑え、必要に応じてスケーラブルに対応可能としました。データベースには高可用性かつMySQL互換のAuroraを採用し、信頼性とパフォーマンスを確保。CI/CDにはCodePipelineを用いて自動デプロイを実現し、開発効率の向上と品質担保を両立しています。さらに、CloudWatchやWAF、GuardDutyによりセキュリティと運用監視も強化しています。これにより、実証実験でありながら今後の本番移行や拡張にもスムーズに対応可能な構成となっています。
JR東海様のご要望に適した技術を選定
■選定技術
PWA(プログレッシブWebアプリケーション)対応
- 電波のない場所でも検査を実施できるようにしたい
- ネイティブアプリケーションよりも低コストで試行したい
※PWA(Progressive Web App)は、ネイティブアプリのような操作性や機能性を備えたWebアプリを構築する技術。オフライン対応やプッシュ通知、ホーム画面追加などが可能。
3Dモデル表示対応(Three.js)
- 変状位置を正確に把握できるようにするため、3Dモデルを利用したい
- Webアプリに使用予定のフレームワーク(React)と親和性が高い技術を使用したい
※Three.jsは、Webブラウザ上で3Dグラフィックスを表示するためのJavaScriptライブラリです。WebGLを簡単に扱えるようにし、3Dモデルやアニメーションを手軽に実装できます。
地図表示対応(Leaflet)
- 実証実験段階においても簡単な地図を表示させ、マーカーやポップアップなどのカスタマイズ、位置のプロットやポリゴン表示を行いたい
※Leafletは、軽量で使いやすいオープンソースの地図表示用JavaScriptライブラリです。Web上でインタラクティブな地図を表示でき、マーカーやポップアップなどのカスタマイズも簡単に行えます。学習コストが低いこともメリットとして挙げられます。
VERIFIED USEFULNESS IN THIS PROOF OF CONCEPT
本実証実験で確認された有用性
4つの機能開発を通じて、橋りょう検査業務の高度化、
効率化を確認
今回開発された4つの機能により、橋りょう検査業務の高度化、効率化、データの標準化など、複数の観点からシステムの有効性が確認されました。
■機能概要
1. 過去変状データの一覧表示機能
過去の変状データがタブレット画面に一覧表示されることにより、紙資料と比較して現地での変状捜索が円滑に行えるようになり、検査業務の効率化に寄与することが確認されました。
2. 検査実施機能
現場で入力する変状データは、プルダウンリストによりシームレスに入力できるよう配慮しました。また、写真やテンプレート図面への情報記入についても、現場のアプリ操作で完結することで、内業時間の大幅な削減(※)につながることが確認されました。
また、変状データ入力における自由記述は、最小限に抑え、プルダウンリストによって一貫した記述形式で記録することで、後のデータ分析や活用が容易になりました。変状データの標準化により、過去の検査記録との比較・分析がスムーズに行えるようになり、長期的なデータ活用の基盤が整備されました。
(※デジタルカメラデータのPC移動、写真・図面への情報記入、 データベースへの登録作業など)
3. 検査支援機能
検査マニュアルの表示機能や重点着目箇所のチェック機能により、経験の浅い担当者でも確実に検査できる環境が整い、検査業務の高度化につながる効果が示されました。
4. PWA(オフライン機能)
通信環境に左右されずに検査が可能なオフライン機能を開発し、電波の届かない場所でも安定した作業が行えることが確認されました。
OUTLOOK FOR THE FUTURE
今後の展望
より高度な検査業務を実現する本番運用向けた機能強化
今回の実証実験を通じて、検査アプリが橋りょう検査業務の高度化および効率化に寄与する可能性が確認されました。今後は、実証結果を踏まえ、本番運用に向けて、より正確かつ安定した検査業務の実現に向けた機能拡充を検討してまいります。
現時点では、変状データの詳細な取得を可能にする機能の開発を計画しており、変状の進行傾向を分析する仕組みや、他システムとのデータ連携による統合管理の実現も視野に入れています。これにより、予防保全に資するデータ基盤の整備を推進していきます。
アジアクエストは、今後もJR東海様との連携を継続し、実証実験で得られた知見を活かしながら、橋りょう検査業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)および橋りょう維持管理の高度化・効率化に貢献してまいります。
TESTIMONIAL
お客様の声
本システムご利用中のお客様のご感想
土木技術者である私たちの「こういうアプリがあれば良い」という思いを汲み取り、ゼロからアプリ開発に取り組んでいただいたことは、非常に挑戦的なプロジェクトでした。しかし、わずか半年足らずでアプリが完成し、その開発スピードに驚きました。
「ユーザーと開発者の認識のずれをなくす」という業務に即したアプリを開発するために一番必要な点を、アジアクエスト様の社員の皆様が理解されている、という印象を受けました。具体的には、実際の検査の現場に足を運んで、積極的に質問を重ねて、今後の更なる機能拡充に向けたご提案を頂きました。
その積極性が様々なプロジェクトにおいて、質の高いアウトプットを継続して出せている要因だと感じました。また、UX/UIの向上に向けた提案のセンスが非常に優れておりJR東海だけでは思いつきもしない発想で開発を進めていくことができました。
打合せの回数を重ねるたび、アジアクエスト様と弊社のチームの一体感の強まりを感じました。弊社の様々な質問やニーズに対して、適切に対応を頂く中で、追加機能の開発にも成功しました。様々な思いが詰まった橋りょう検査支援アプリは、わが子のようにかわいいものがあります。

アジアクエスト株式会社について
アジアクエストは、お客様のDX(デジタルトランスフォーメーション)に必要なコンサルティングから、デジタルテクノロジーを駆使したシステムの設計、開発、運用までを一貫して伴走支援します。
IoT、AI、Cloud、Mobile、Web、UI/UXの各デジタル分野の専門テクノロジーチームを有し、お客様のゴールに向けて最適なプロジェクトチームを編成します。DXに関する豊富な知見と幅広い技術力により、ビジネスモデルの有効性や技術的な課題を検証する為のPoCの実施やデジタルに対応した大規模なシステムの構築まで、スピーディーな対応が可能です。