
AGI(汎用人工知能)とは、従来型AIより進化したAIのことです。従来型AIとの違いや実現できること、課題・注意点、企業の備えについて解説します。
生成AI/AIエージェントという言葉を世間的によく見聞きするようになりましたが、AIエージェントよりも進化した「AGI」も認知が広まりつつあります。
AGIが実現した場合、社会的にさまざまなメリットをもたらしますが、懸念事項も複数あるため、ネガティブな事態を引き起こさないように適切な理解と活用が必要です。
AGIの意味と従来型AIとの違い、構成要素、実現できることと課題・注意点について解説します。
AGIとは

AGIとは、「Artificial General Intelligence(汎用人工知能)」の略称で、AIエージェントより進化したAIを指します。
AGIは人間と同等の思考や能力を持っているため高度な意思決定やタスク処理が可能です。
完全なAGIは2025年7月現在において実現していませんが、早ければ2030年までには実現されるといわれています。
従来型AIとの違い
AGIはAIの一種ですが、従来型AIとは機能が異なります。
AGIは自律的に学習しながらさまざまなタスクを処理できるのに対し、従来型AIは人間から学習データを与えられなければ学習できず、タスクも単一のものしか処理できません。
それぞれの特徴や機能から、AGIは「強いAI」、従来型AIは「弱いAI」に分類されています。
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AGI(強いAI) |
従来型AI(弱いAI) |
| 特徴 |
人間のように思考・タスク処理する汎用的AI |
特定のタスク処理に特化したAI |
| 活用方法 |
- 自律的な思考による課題解決
- アイデア創出
- アートなどの創作活動
- 複数のタスク処理
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- 画像認識、音声認識、翻訳など特定の領域のタスク処理
- あらかじめ定義された問題対応、解決
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| 学習方法 |
自律的に学習し、知識を得ていく |
人間からデータを与えられて学習する |
| 意識・感情 |
持つ可能性がある |
持たない |
ASIとの違い
ASIとは、「Artificial Super Intelligence(人工超知能)」の略称で、AGIがさらに進化したAIを指します。
ASIは人間の能力や知能をはるかに超えるといわれており、例えば、人間では対処不可能な事柄の解決策を見出すなど、人間を凌駕する能力を発揮します。
AGIが進化したAIがASIのため、AGIが完全に実現できていない段階ではASIの実現もまだ先になります。しかし、近年の技術の著しい進歩・変化を見ると、遠い未来の話ではないかもしれません。
AGIが必要な理由

AGIが必要な理由として、次の3つが挙げられます。
- 変化の激しい社会への対応
- 経済損失の回避
- 労働力不足のカバー
なぜAGIが求められているのか、それぞれの理由を解説します。
1.変化の激しい社会への対応
現代はIT技術がめまぐるしいスピードで発展し、社会の変化が激しいです。顧客ニーズも多様化しているため、変化に対応できないと企業価値が下がる恐れがあります。
変化に置いていかれないようにするには、既存のAIを都度修正し、現状に適したプログラムに変更する必要がありますが、多大なコストがかかるでしょう。
弱いAIではなく、AGIという強いAIが実現した場合、AIが自律的に学習するため、コストや手間をかけなくても変化へ柔軟に対応していけると考えられます。
2.経済損失の回避
経済産業省は、日本企業がDXを進めない場合、国際競争力を失って2025年以降に大きな経済損失を招くと提唱しています。
いわゆる「2025年の崖」の影響は大きく、企業発展に臨めない企業が倒産したり、雇用機会の低下によって経済を停滞させたりする可能性があります。また、社会全体の効率性が損なわれ、不便さから暮らしにくさも生じるかもしれません。
日本が経済損失を回避するには、従来型のAIだけでなく、人間のように考えてくれるAGIを活用して解決策を見出し、現状を打破していくことが必要です。
2025年の崖の詳細は2025年の崖とは?解決法やアジアクエストのサービスを解説をご覧ください。
3.労働力不足のカバー
少子高齢化が著しく進行している日本において、企業は生産性を維持するために減少していく労働力を確保することが求められます。労働力の確保には人材採用が挙げられますが、そもそも「人」が減少している状況で「採用」に固執するのはリスクがあるでしょう。
AIを活用すると人手不足のカバーにつながります。人間と異なり、24時間フル稼働してくれる点では、生産性の維持どころか高めることも可能でしょう。
AGIは、従来型のAIよりも高度な処理が可能なため、生産性のさらなる向上や企業発展を実現できると予測されます。
AGIを構成する3つの要素

AGIを構成する主な要素は次の3つです。
- 機械学習
- 認知アーキテクチャ
- 認知ロボティクス
AGIを「強いAI」としている3つの要素について、確認しましょう。
1.機械学習
機械学習とは、コンピュータに大量のデータを読み込ませ、ルールやパターンを学習させる技術のことです。機械学習自体は従来型AIでも要素のひとつとして取り入れられていますが、AGIは「ディープラーニング(※1)」と「強化学習(※2)」が併用されています。
情報処理の階層が多いディープラーニングによって、より複雑に思考し知識を習得するとともに、強化学習で試行錯誤を繰り返し、最適解を導き出します。
※1 ディープラーニング
ニューラルネットワーク(人間の脳神経細胞に似た構造)を用いたAIの機械学習方法のひとつ。
※2 強化学習
与えられたデータを試行錯誤して学習し、価値を最大限に高める意思決定を導き出す機械学習方法のひとつ。
2.認知アーキテクチャ
認知アーキテクチャとは、人間の認知モデルを作成する研究のことです。人間の認知機能をAIに学習させることで、AIは人間と同じような思考をし、相手の感情に寄り添ったアクションが可能になります。
認知アーキテクチャは、データ構造によって「記号主義的」「分散表象的」「両者の折衷的」なものに分類されます。
記号主義的なアーキテクチャはプログラミング言語の操作によって知能の実現を図り、分散表象的なアーキテクチャはベクトルによって表されます。
3.認知ロボティクス
認知ロボティクスとは、人間の赤ちゃんが周りの環境やさまざまなものと接するなかで学習していくように、ロボットも相互作用を通じて成長するように設計し、認知発達について研究する取り組みのことです。
実際に動くロボットで研究することで、シンボルグラウンディング問題(※)の解決につなげることができます。
認知ロボティクスには「認知発達ロボティクス」「記号創発ロボティクス」「社会的知能ロボティクス」の3つの分野があり、それぞれ「認知機能」「言語」「言語・身体を使ったコミュニケーション」の観点から研究が行われています。
※ シンボルグラウンディング問題
AIはシンボル(記号)が実世界とどのように結びついて(グラウンディング)いるかを理解できないという問題。(例)人間は「シマウマ」と聞いて「シマ模様のある馬」と推測できるが、AIは「シマウマ」という記号そのものしか認識できない。
AGIで実現できること

AGIで実現できることとして、次の3つが挙げられます。
- 自律的な思考による課題解決
- 対人間のようなコミュニケーション
- 新たなアイデアや理論の創出
それぞれの内容と実現例をご紹介します。
1.自律的な思考による課題解決
AGIが実現すると、自律的な思考による課題解決が可能となります。AGI自らが思考する能力を持つため、現時点では解決できない課題も人間のように思考し、さまざまなタスクに対処できるようになるといわれています。
AGIは人間と異なり、膨大なデータを短時間で処理・分析できるのが特徴のひとつです。そのため、気候変動など規模が大きい課題に対しても活用が期待されています。
【実現例】
- 医療分野:患者のデータ分析による診断、新たな治療法の立案、新薬の発見
- 自動運転車:リアルタイムで交通データを分析し、最適なルートを選択・走行
- 教育分野:生徒の理解度に応じて、学習の難易度や内容をリアルタイムで調整する
2.対人間のようなコミュニケーション
意識や感情を持つ可能性があるといわれているAGIは、対人間のようなコミュニケーションをとれると考えられます。具体的には、AGIが人間の表情、声から体調や感情を読み取り、状態に合った対応をとります。
まるで人間と話しているかのようにAGIとコミュニケーションがとれると、親近感が湧いて活用の幅が広がり、多くの課題解決につながるでしょう。
【実現例】
- カスタマーサービス:顧客の感情や要望に合った対応、解決策の提案
- 医療分野:患者に寄り添った対応、相談受付
- グローバル:通訳、翻訳
3.新たなアイデアや理論の創出
自律的に学習・思考するAGIは、新たなアイデアや理論の創出も実現できます。ビジネスにおいては、新たな商品の開発につながるかもしれません。研究施設では、新たな仮説からいままで解明できなかったことが明らかになる可能性もあります。
人間のように創造性も持つため、イラスト作成などのクリエイティブな活動でも活躍するといわれています。
【実現例】
- クリエイティブ関係:作詞作曲やイラスト、絵画の創造
- 研究施設:仮説の提唱と実験のシミュレーション立案
- ビジネス分野:新たな商品開発や斬新なアプローチ方法の立案
AGIの課題

AGIが実現するには、AIに関する次の2つの課題の解決が求められます。
- フレーム問題
- チューリングテスト合格騒動に関わる問題
課題の内容について解説します。
1.フレーム問題
フレーム問題とは、AIが情報を適切に取捨選択できず、処理が止まってしまう問題のことです。
例えば、自宅から500m先の公園に向かおうとしたとき、人間の場合は道路状況や交通量、経験から最適なルートをあまり時間を要さずに導き出せるでしょう。一方、AIは公園へ向かうすべてのルートや、関係のないほかのルートも分析してしまうため、処理が膨大になり止まってしまうというケースがあります。
タスクに対し、重要度や優先度が設定されておらず、情報の取捨選択が適切に行なわれないために起こる問題ですが、細かく設定してしまうと汎用性がなくなってしまうことも課題として挙げられます。
2.チューリングテスト合格騒動に関わる問題
チューリングテストとは、機械が人間と同じように思考しているかを調べるテストのことです。
具体的な方法は、審査員1名と検証対象の機械1台を用意し、壁で隔てられた状態でディスプレイとキーボードを使用して会話をします。審査員が「人間か、機械か」の判別ができなければ、機械は「人間と同じように思考して話している」とみなされます。
チューリングテストで「合格」する機械が出ないなか、2014年にイギリスのレディング大学で行われたチューリングテストで、13歳の少年という設定のAI「Eugene Goostman(ユージーン・グーツマン)」が合格しました。しかし、検証内容に疑義があり、「疑惑の合格」といわれています。
「機械が自分で思考しているのか」それとも「機械が人間のように振る舞っているだけなのか」が判断できず、証明も難しいため、AGIの実現の課題として挙げられています。
AGI活用の注意点

人間と同等の知能・思考を持つAGIが誕生した場合、人々の生活がよりよくなったり社会的発展につながったりする可能性があります。一方で、使い方を誤ると混乱や甚大な被害をもたらす恐れがあるため注意が必要です。
例えば、シンギュラリティ(技術的特異点)(※)によって起こる可能性のあるさまざまな問題が懸念されています。シンギュラリティは2045年に起こると予測されているため、「2045年問題」といわれています。
懸念されている事柄の例として、下記が挙げられます。
- 人間の仕事がAIで代替されることによる労働の変化
- 人間がAIを制御できなくなる
- 自律するサイバー兵器など新型兵器への活用
- 人間(脳)とAIの融合による新人類の誕生
- 人間の記憶や意識の機械への継承による「生死」の概念の変化
AIの進化によってネガティブな状況を招かないためにも、AIに支配されたり依存したりするのではなく、共存・共生を目指した法整備や対策が必要です。
※ シンギュラリティ
AIが自己学習によって人間を超越すること
AGIに対する企業の備え

AGIを正しく使えば、企業にとって業務効率化につながり、現代日本が陥っている人手不足という状況をカバーできる可能性があります。
そのため、企業はAGIの誕生に備えて次の2つに取り組むことが求められます。
1.データ基盤の整備を行う
AIの活用には、AIが学習するデータを用意することが重要です。しかし、多くの日本企業はAIに学習させるためのデータを蓄積できておらず、業務へのデータ利活用も進んでいない状況です。
データを蓄積し、活用するには、データ基盤の整備が求められます。データ基盤とは、企業が保有するデータを収集・蓄積・加工・分析するシステムのことで、データの一元管理や業務の属人化防止などにもつながります。
データ基盤の整備は、AIの活用に必要不可欠なため、来るAGI時代に備えて社内のデータインフラ基盤を固めておきましょう。
データ基盤の詳細はこちらをご覧ください。
2.IT人材を確保・育成する
AGIがいかに便利であっても、正しく効果的に使わなければ思いどおりに動いてくれないかもしれません。
AGIなどのAIの活用には、高い専門知識やスキルを持った人材が必要なため、IT人材の確保や育成に注力することも大切です。例えば、データサイエンティストやAIエンジニアなどの人材が必要でしょう。
AIの活用で業務効率化し、リソースが空いた分、人材確保や育成に予算を使い、進化し続けるAIを適切に活用できるようにしておきましょう。
まとめ

AGIは従来のAIと異なり、自律的に学習しながら幅広いタスクを処理できます。また、人間のように意識や感情を持つとされており、人間の感情を読み取ったうえで適切な対応をすることも可能です。
AGIによって社会的に利便性が高まる一方で、シンギュラリティによる懸念事項もあるため、ルールや法の整備が求められます。
企業は、AGIの到来に備えて、業務へのAI導入や人材確保・育成に取り組むことが大切です。AIの導入や活用方法がわからないという場合は、外部のプロに相談すると効率的に進められるでしょう。
アジアクエストができること

アジアクエストはAI/生成AIをお客様のDXに取り入れることに早くから着目し、AIエージェントの利活用にも取り組んでいます。お客様の個別の状況にあわせて、AIエージェントが提案資料を自動で作成、出力してくれたり、設備の異常をロボットやカメラを通して確認した後、その対処方法について人間に意思決定を求めるシステムなど、様々なお客様への提案が可能です。
アジアクエストは、お客様のDX(デジタルトランスフォーメーション)に必要なコンサルティングから、デジタルテクノロジーを駆使したシステムの設計、開発、運用までを一貫して伴走支援します。
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