「構想段階から寄り添い、共に創る」明電舎のイノベーションを実現した“伴走型”開発支援
~スマート保安の実現により、年間の巡視点検工数を87.3%削減~
新規事業や新たな価値創出に挑む現場において、従来の開発アプローチでは対応が難しく、曖昧な要件や複雑な環境に直面することも少なくありません。株式会社明電舎様(以下、明電舎様)のスマート保安サービス構築において、アジアクエストは、ただ提示された要件通りに開発するのではなく、構想段階から伴走し、要件の具体化を共に進めながら、システムを共創しました。
明電舎様は、1897年創業の重電メーカーで、発電・送配電や電鉄用の電気設備、産業用コンポーネントなどを製造し、フィールドエンジニアリングなども手掛けています。スマート保安サービスの構築にあたり、明電舎様は構想段階から要件の具体化まで共に進めるパートナーを求めていました。アジアクエストは、曖昧な要件や複雑な環境にも柔軟に対応し、構想フェーズから伴走。お客様と共創しながら要件を明確化し、システムを開発しました。
Background & Purpose 導入の背景と目的
今回のプロジェクトのきっかけはコロナ禍において、明電舎様が自社の製品をリモートで監視する仕組みの検討に着手されたことでした。電気設備の監視制御はSCADA※ と呼ばれるシステムで対応していますが、設備の巡視点検や定期点検は人がアナログに行っています。人材不足が深刻化する中で、人による点検の負担を減らし、電気という産業や社会の生命線であるインフラをいかに守っていくかは、社会的意義の大きい明電舎様の課題でした。今回はその課題解決の一環として、スマート保安サービスの開発を進める中で、3Dモデルの軽量化やシステムのUI/UXに課題を感じ、Web3D開発に強みのあったアジアクエストにお声がけをいただきました。
※SCADA:Supervisory Control And Data Acquisitionの略。変電設備などを遠隔からリアルタイムに監視・制御するシステムを指す。
Role 役割
共創×Web3D×UI/UX改善×システム開発による価値創造
本プロジェクトにおいて、アジアクエストは「単なるプログラム実装者」ではなく、「構想段階から課題を共に整理し、プロダクトのあるべき姿を一緒に描き実装する伴走パートナー」として参画しました。
スクラムチームの一員として明電舎様と一体となり「共創型の開発スタイル」を実践しました。実際に現場で各種の製品を使う人たちからのフィードバックを受けて、要件を柔軟に見直しながらシステムを作り直す、これを何度も繰り返すことで誰もが使いやすいシステム作りを支援しました。
開発の過程で出てくる“要件のグレーゾーン”にも、議論を重ねながら具体化し、単なるシステム構築を超えた価値創出に取り組みました。
システム概要
本システムは、設備に各種センサーやカメラを設置してIoT化することで、遠隔からのモニタリングを可能にします。常時蓄積されるデータを活用することで、巡視点検時の点検項目を削減し、業務の効率化を図ります。さらに、保守・メンテナンスの記録や図面などの関連情報をクラウド上で一元管理・共有することで、設備保全業務の省力化と高度化を実現します。
技術概要
本システムの基盤については、AWSのクラウドを活用しています。クラウドインフラ基盤は、元々明電舎様にてAWSを利用されていたため、AWSに強みのあるアジアクエストはスムーズに開発に参画することができました。フロントエンドにはReactを用い、直感的で使いやすいUI/UXを実現しています。開発にはNode.js を用いて高速な速度処理、スケーラビリティ、JavaScriptによる開発の一元化を図っています 。APIにはTypeScriptを活用することで、エラーの早期発見やコードの可読性・保守性を確保することで、開発効率とコード品質を向上させています。
3Dモデルの軽量化およびUI/UXの改善は今回のプロジェクトの肝でした。アジアクエストは既に蓄積していた3Dモデル制作におけるノウハウを活用することで、軽量化とUI/UXの大幅な改善を実現しました。また、様々なシーンでの利用を想定した、ボタン一つで3Dモデルを軽量化する汎用性の高い仕組みも構築しています。
3Dモデルの制作における選定技術
- Three.js
- Webブラウザ上でWeb3Dを表示するためのJavaScriptライブラリです。WebGLを簡単に扱えるようにし、3Dモデルやアニメーションを手軽に実装できます。
デジタルツインを活用した3Dモデル(静岡県沼津市 特別高圧変電所)

各種メーター・センサー類で設備をIoT化

遠隔地からの監視を実現


Brand Experience 導入による効果
2025年10月 時点
- 年間の巡視点検工数を87.3%削減
- 常時監視による巡視点検周期の延伸(週次から月次)
- 目視点検項目の一部自動化
Outlook for the future 今後の展望
明電舎様は社会インフラや産業を支えるものづくりをはじめ、製品の販売や保守メンテナンスを基幹ビジネスとしていますが、ソリューション提供プラットフォームのMEIDEN CONNECTを用いたデータ活用ビジネスを加速していくことが戦略の一環となっています。今後アジアクエストは明電舎様に寄り添い、社会課題の解決につながる価値創出と提供を共に進めてまいります 。
Testimonial お客様の声
アジアクエスト様には、案件の初期段階において、明確な要件定義やゴールを要求されないことに助けられました。まだ要件が曖昧な状態でも相談でき、チームとして一緒に作り上げていくことができる新しい開発スタイルに可能性を見出しました。アジアクエスト様は、当社チームの一員として活躍していますが、バックボーンに組織があるという信頼感は大きなものがあります。当社のアジャイル型開発プロジェクトは、これから経営に貢献するビジネス成果が求められるステージに入ります。成果に結びつく種の増加と、事業化による利益拡大の両輪が必要です。前者だけでなく後者に関してもアジアクエスト様に期待しています。