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AI×CFDで室内環境を可視化・予測するデジタルツインを開発 — 将来的な空調制御への展開を見据えた基盤技術 —

作成者: AQ|Jul 29, 2026, 5:00:00 AM


新菱冷熱工業株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:加賀美猛、以下「新菱冷熱」)とアジアクエスト株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役会長CEO:桃井純、以下「アジアクエスト」)は、BIMを基盤とし、AIによるCFD*1技術を活用して任意の時期における室内環境(温度・湿度・CO₂濃度など)を可視化・予測する「AI-CFD環境予測デジタルツイン(以下「スマート・エア・ツイン」)」の初期版を開発しました。

■ 背景・目的

新菱冷熱は、長期ビジョン2030「未来・環境エンジニアリングカンパニー」を掲げ、建設DXの推進と新規事業創出力の強化を通じて、サステナブルな脱炭素社会への貢献を目指しています。
アジアクエストはAI・IoT・クラウドなどの先端技術を活用し、企業のDX/AIX推進を支援する「AIインテグレーター」として事業変革を支援しています。
両社は、新菱冷熱のイノベーションハブ(茨城県つくば市)における空調設備・IoT基盤と、アジアクエストのAI実装技術を組み合わせ、環境の可視化と予測を可能にするデジタルツインの構築に取り組みました。

■ スマート・エア・ツインの特長

スマート・エア・ツインは、建物内部から外気までを含む空気の流れを3D空間で再現し、従来は個室単位に限定されていたCFD解析対象を建物全体に拡張しています。
これにより、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の実現に向けて重要となる、外気導入と空調の最適な組み合わせを検討するための、快適性と省エネルギー性の両立に向けた分析・シミュレーションを支援します。

主な機能

1)室内環境の可視化
①BIMデータによる建物形状の3D表示機能および点群データによる内装表現
②センサーにより取得した温度・CO2濃度・PMV等の空間分布表示
③CFD解析結果に基づく温度・気流の可視化(アニメーション表示)
④ビーコンを用いた在室者の位置情報表示
※実測データとの連携は、リアルタイムではなく、取得タイミングに基づく反映

2)任意時点の環境を再現する「AI-CFD」 
AIを活用し、季節・時刻・空調条件などを指定することで、短時間で解析結果を生成し表示する「AI-CFD」を実装しています。また、約2,500件のCFD解析データを用いてCNN*2モデルを構築することで、高速かつ柔軟な環境予測を実現しています。今回開発した「AI-CFD」は、通常のCFD解析と比較し、解析速度を200分の1以下に短縮することが可能です。これにより、実空間では検証が難しい条件下での環境状態を再現し、運用改善や設備更新における意思決定を支援します。

― スマート・エア・ツイン アプリケーション画面 ―

■ 今後の展望

スマート・エア・ツインは、イノベーションハブにおける環境グラデーションの可視化に活用されています。今後は、「AI-CFD」の予測精度の検証・高度化を進めるとともに、空調制御システムとの連携を強化することで、解析結果を設備システムにフィードバックする環境最適化・自動制御への展開を目指します。

■ 参考:イノベーションハブ本館の概要・特長

イノベーションハブ本館(以下「本館」)は、外皮性能の工夫によりZEB(Zero Energy Building)化を図りながら、快適性と省エネルギー性の両立を目指して設計・建設された施設です。2024年3月に開設され、設計・施工・維持管理にわたりフルBIM(Building Information Modeling)活用を目指した建物として運用されています。
本館では、自然に近い環境から空調でコントロールされた環境までの空気の流れを利用し、多様な温湿度・光環境を組み合わせた「環境グラデーション」を実現しています。本館利用者が、バリエーション豊富な環境と働く場所を自由に選ぶことができるABW+e(Activity Based Working + environment)を形づくっています。
本館来訪者からは、フロア内で連続的に温湿度等が変化する環境グラデーションのビジュアル表示を希望する声が寄せられていました。

― 本館の環境グラデーション ―

■参考:本館の空調制御の特長

CFD技術を用いた空調制御は、室内の温度や湿度などの分布を考慮しながら制御できるため、局所的な不快感の低減や快適性の向上に資する技術として期待されています。本館では、センシング情報や天気予報の情報をもとに近未来の室内環境をCFD技術で予測しながら、人が感じる温冷感を示す指標であるPMV*3に基づいて空調を制御する「CFD連携PMV制御」を開発・運用し、その効果を検証しています。CFD技術を用いた空調制御は、快適な室内環境の維持と省エネルギー化の両立を目指すものですが、解析には高い計算負荷が伴うことから、効率性が課題となっていました。こうした課題への対応策として、AIや機械学習を活用したCFD解析の手法に注目が集まっています。

1時間後の気象予報から将来の室内環境を予測し、
温度・湿度・放射量・気流を快適かつ省エネルギーに制御する空調システム

― CFD連携PMV制御 ―

*1 CFD:Computational Fluid Dynamics(数値流体力学)
*2 CNN:Convolutional Neural Network(畳み込みニューラル・ネットワーク)
*3 PMV:Predicted Mean Vote(予想平均温冷感申告)の略称で、温度、相対湿度、平均放射温度、気流、着衣量、活動量の6要素により、人がどのように感じるかを表した温冷感指標。ISOの標準では、PMVが±0.5以内を推奨している

■ 新菱冷熱について

1956年創業以来、空気調和、電気設備、給排水衛生、コージェネレーションシステムなどの幅広い分野で、経営ビジョン「さわやかな世界をつくる」のもと国内外の大型プロジェクトを手掛けている総合エンジニアリング企業です。DX推進においては、2022年に発足したデジタルトランスフォーメーション推進本部を中心に、デジタルを活用した業務プロセス改革に取り組んでおり、国土交通省BIMモデル事業への参画など、BIM導入も積極的に展開しています。2025年10月からスタートした第16次中期経営計画でも、データドリブン経営を実現すべく、DX推進とデジタル基盤をさらに強化するためにさまざまな施策を実行していきます。