── 今回はSI業界全体の構造変化についてお聞きしたいと思います。桃井会長は「SI業界が地殻変動を迎えている」とおっしゃっています。具体的にどういう意味でしょうか。
従来のSIビジネスの根幹にあった「人月モデル」が、今まさに崩壊の入口に立っています。
SI業界が長年にわたって収益を上げてきた構造は、非常にシンプルなものでした。エンジニアを多く抱え、その稼働時間を積み上げることで売上をつくる。要するに「エンジニアの労働時間を価値として提供するビジネス」です。しかし、AIエージェントの急速な進化がこの構造を根底から揺さぶっています。
この変化に対応できない、あるいは対応が遅れてしまう会社が相当数出てきます。加えて、多重下請け構造の中で付加価値を生み出すことなく中間マージンを得ていた会社も同様です。そういった会社は何らかの形で淘汰されていく厳しい状況が待っていると思っています。2030年にはSI業界全体の内、約半数の会社が倒産・統廃合・業態転換を余儀なくされると見ています。
── では、その地殻変動の中で勝ち残る会社とはどのような会社でしょうか。
勝ち残る会社の条件は二つあると思っています。
一つは、AIを積極的に活用してエンジニアの生産性を最大化できることです。2030年には2025年比で5〜10倍の生産性になっていることが一つの目安となります。同じ人数でより多くのアウトプットを出せる会社は、コスト競争力と提供スピードの両面で圧倒的な優位に立てる。もう一つは、顧客のビジネス課題に直接向き合い、解決策を設計できる上流人材を持つ会社です。AIが高度化するほど、その希少価値はさらに上がっていく。この二つを同時に実現できる会社が、次の時代のSI業界をリードする存在になると思います。
── アジアクエストはどうなると思いますか。
当社は間違いなく、この地殻変動の勝ち側にいると確信しています。
アジアクエストは創業以来、顧客のビジネス課題に直接向き合う上流工程を重視してきました。大規模な下請け構造の中で人を積み上げるのではなく、顧客と対等に議論し、DXの要件定義から設計・実装・内製化支援まで一気通貫で担う。この姿勢は、AIが普及した世界においてこそ、より強く求められるものです。
加えて、今年から全社でAI駆動開発を推進しています。AIを自らの開発現場に組み込むことで、エンジニアの生産性は大きく向上していきます。同じ人数でより多くの価値を届けられる。これはそのまま収益力の向上につながります。
── アジアクエストの事業領域について改めて教えてください。
アジアクエストは大きく3つの領域で価値を提供しています。
一つ目は「AIインテグレーション」です。AIをお客様の業務プロセスそのものに組み込み、変革を実現するところまで伴走する仕事です。たとえばある企業が「AIで業務を効率化したい」と言っても、多くの場合、何からどう手をつければいいかわからない。そこに私たちが入り、どのAI技術を、どの業務プロセスに、どういう形で適用するかを設計・実装します。単なるコードを書く会社でも、言われたものを作るだけの会社でもない。AIが普及するほど、この「実装の担い手」への需要は増す一方だと見ています。
二つ目はデータ基盤などの「モダナイゼーション」です。AIを企業の業務に本当に活用しようとすると、必ずデータという壁に直面します。AIはデータがなければ機能しない。ところが多くの企業では、データがバラバラに存在していたり、品質が低かったり、そもそも活用できる状態になっていなかったりします。当社はクラウドデータ基盤の整備に強みを持っており、AIを動かすための「土台」を作る仕事にも注力しています。また、レガシーシステムのモダナイゼーションも含め、企業のIT基盤そのものを時代に合った形に刷新する支援を行っています。
三つ目は「コンサルティング」です。AI実装やDX推進において、技術だけで課題が解決するケースはほとんどありません。経営課題の整理、業務プロセスの再設計、組織変革の支援等の上流からの関与なくして、真の変革は実現しません。当社はAIX・DXに精通したコンサルタントが、戦略立案から推進支援まで一気通貫で担います。技術と経営の両方をわかる人材がいることが、アジアクエストの大きな強みの一つです。
この3つの領域はそれぞれ独立しているのではなく、互いに連動しています。コンサルティングで課題と戦略を定め、モダナイゼーションでデータ基盤を整え、その上にAIインテグレーションを重ねていく。 この3ステップが有機的につながることで、顧客は本当の意味でAIを経営の武器にできる。アジアクエストはその全工程に伴走できる、数少ないプレイヤーだと自負しています。
── 淘汰される側のSI企業と、生き残る側のSI企業の分岐点はどこにあると思いますか。
複合要因ですが、一番は「人月を売る」から「成果を売る」への転換ができるかだと思っています。
今後AI化が進む中で、単純な実装作業は人間がやらなくて済む時代になる。その時、自社の価値を「工数」でしか語れない会社は存在意義を失います。一方で、顧客の経営課題と向き合い、どんな技術をどう組み合わせれば解決できるかを設計できる会社は、むしろ希少価値が上がる。
分岐点は、結局「人材」です。顧客と対等に議論できる上流人材をどれだけ育ててきたか。それを支える組織文化があるか。AIが進化するほど、そういう人材の価値は指数関数的に高まります。アジアクエストがビジネスエンジニアの育成に力を入れ、エンジニアの成長環境にこだわり続けてきた理由は、まさにここにあります。
── 最後に、投資家の皆様にメッセージをお願いします。
業界が地殻変動を迎えているこの局面に、私たちは迅速に変革を行ってきました。だからこそ、この変化が大きければ大きいほど、アジアクエストにとってのチャンスも大きくなると考えています。
現在、全社を挙げてAIを中核に据えた「AI駆動開発・業務推進・経営」を推進しています。これは単なる生産性向上の話だけではありません。
私たち自身がAIシフトをいち早く体現し、その知見を顧客に届ける。実践者でなければ、本当の意味での支援はできないからです。
アジアクエストはアジアNo.1のAIインテグレーターを目指しています。この大変動を追い風にしてその目標に近づいて参ります。引き続き、当社の成長を見守っていただければ幸いです。